ここに来なければ与えてもらえない奇跡

横なぐりの雪に見舞われ立ち往生したボクは車を路肩に止めた。富良野や美瑛に降る雪はこうしていつもボクの行く手を阻む。

とは言っても今年はこれまで経験したことがないほどの暖冬で雪は格段に少ないとこの地に暮らす人達は言う。
少ないと言っても降る雪の量には毎回驚かされるが。

カーラジオからは新しい年を祝う賑やかな声が流れていた。

そうなんだ。
僕は毎年ここ北海道で新年を迎えることに決めている。

パウダー状の雪は結晶のまま溶けることなくフロントガラスを覆う。それはまるで雪の精霊たちの舞を一人貸し切った劇場で見ているかのようだ。

その時バックミラーを黒い物体が横切った

「なんだろう・・・」

外に出て目をこらすと吹きすさぶ雪に立ち向かうかのように一羽のカラスが立っていた。
それはまるでこの雪景色が彼のために用意されたかのようにどこまでも崇高で、どこまでも気品高く、まるで一枚の絵画のようだった。

僕は急いで助手席のカメラを取ろうとしたが寒さでうまく手に持つことができない。
絞りを合わせようとしても横殴りの雪に視界を邪魔され思うようにできない。
やっとの思いでシャッターを切ったその瞬間、白一色の空へ彼は飛び去って行った。

美瑛の峠を越えた芦別の、その外れの脇道に描かれた一枚の名画。

ここに来なければ与えてもらえない奇跡の出会いに、ボクは神のギフトを感じた。

(2016年・芦別にて)

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